左がホセ・マリア・ アリスメンディアリエタ

   社会的経済とは

 

社会的経済入門 下線が入っているものはPDFで読めます。   


フランス生まれの「社会的経済」と日本

――(「評論」、日本経済評論社刊、NO.1752009.10


 日本において、「社会的経済」の認知度は未だに低いといってよい。一九九〇年代前後には、社会的経済の概念は曖昧だとの批判をずいぶんと聞かされた。日本に社会的経済についての類似の現象がないので、納得させるのはなかなか困難だと思った。最近は「社会的企業」という言葉が日本でも広がりつつある。われわれは数年前に日本経済評論社から『社会的企業』を翻訳出版したが、世間ではどちらかというとアメリカモデルが注目されているようだ。

 これまで社会的経済は、ドイツの批判者からは「社会主義経済」のようなものだと言われ、日本の批判者からは新自由主義に追従するものだと言われたりしている。あるとき「社会的経済のようなフランス仕込みの思想は」とマルクス主義派から言われたので、果たしてマルクスというのはどこの国の人であったのかと苦笑を禁じ得なかったことがある。そのような話は別としても、ともかく社会的経済の考えは日本ではなかなか広がりを見せない。その理由は、いろいろあろうが、日本においてはやはり、公的セクター(政府)と営利民間セクター(市場)の二分法的思考が根深いからであり、歴史的に見ても市民経済活動が弱かったという事情が大きいと思われる。

 現行の日本の政治的経済的危機において、どのような展望と代案を提出できるのか。そこでフランスの社会的経済の本をさらに一冊翻訳することにした。フランスはやはり社会的経済の発生の地であり、その点でもっとも先進的である。次のようないくつかの特徴点を上げることができる。

 第一にフランスにおいては社会的経済関係の法制度が進んでいることである。これは政府が社会的経済の存在と役割を一定程度認知していることを示すし、市民が経済的活動や社会活動を行うための制度整備が進んでいることを示す。たとえば日本での法整備は、戦後においていわば協同組合法しかなかったのである。その協同組合法も縦割りで一般法は存在せず、また労働者協同組合法も存在しない。アソシエーションに関しては一九九八年の特定非営利活動促進法(いわゆるNPO法)が一応の法律となるまで存在しなかったし、また共済組合法も公務員関係の規則を例外として、実際上の共済組合法は存在していないのである。また財団も日本的特殊性を持っており、市民的活動からはほど遠い存在にすぎない。だから日本では社会的経済の定義が困難なのである。

 第二にフランスにおいては、運動のネットワークが構築されていることである。いわば従来型の農協や協同組合金融機関や労働者協同組合が、雇用や社会サービスの分野で「社会的企業」を支援している。翻って日本においては、そうした新旧の社会的経済グループ(たとえば農協・生協などと新しい事業型NPOなど)のネットワークづくりはほとんど取り組まれていない。

 第三に、フランスにおいては、社会的連帯金融というべきものが始まっている。これは、社会的経済セクターあるいは非営利・協同セクターのスキームをバージョンアップさせるものとして評価できる。すなわち、従来の協同組合原則においては人々は出資者であったが、フランスの「勤労者貯蓄法」を援用して、社会的連帯金融により社会的企業を支援する人々が、勤労者にして投資家(資本家)の性格も持つことになる。日本における市民バンクやマイクロクレジットの試みはいまだ小規模のものであり、個人出資者が利子を受け取らないものであるが、フランスにおいては「勤労者による投資」にもなる。さらには社会的経済金融市場の形成が進みつつある。もちろんこの実験がどのように展開するのかについて楽観論は禁物であるが。

 フランスの社会的経済は社会的要請である連帯と経済的要請である効率の両面を追求することに眼目を置いている。市場でどのように市民的民主的な社会的経済企業が振る舞うのか、また準市場および非市場において連帯経済はどのように市民の社会的政治的経済的活動を活性化し、それらをネットワーク化できるのか。この課題はヨーロッパのみならず日本においてもきわめて重大な課題となって近々直面することになると思われる。([いしづかひでお/都留文科大学非常勤講師、非営利・協同総合研究所いのちとくらし研究員])

 

『フランスの社会的経済』(T・シャンテ/石塚秀雄訳、日本経済評論社、2009年10月、A5判本体2800円




 社会的経済としての協同組合セクターの位置づけ  (PDF版)

【原題】公協私の新混合経済と協同組合セクター、〔新協同組合ビジョン特集T 研究課題1〕<21世紀の社会経済と協同組合研究>、石塚 秀雄、にじ 634)、21―36、2011

「今日、協同組合セクターの歴史的社会的役割は転換期にきている。1980年のレイドロー報告では、協同組合の思想的危機を克服すべきだと述べている。すなわち営利企業でもなく国家セクターでもない協同組合とはなにかを再考すべきだと言っている。世界的には協同組合セクターは非営利・協同セクター、社会的経済・連帯経済セクター、サードセクターなどの主要なセクターとなりつつある」
▽主な目次
 1 協同組合の発生、社会的経済と政治的経済の発生
 2 混合経済の発生
 3 フランスにおける協同組合セクター論と混合経済
 4 社会的経済システム
 5 混合経済の歴史的経緯
 (1)19世紀の混合経済
 (2)ケインズにおける混合経済
 6 新自由主義による混合経済
 7 福祉国家から新社会的国家へ
 8 日本における新混合経済の方向
   @ 公的セクター(国家・地方自治体)
   A 営利セクター
   B 社会的経済セクター(非営利・協同セクター)
 9 おわりに、協同組合セクターの問題点


フランスの社会的経済

ティエリジャンテ(Thierry Jeantet
石塚秀雄訳
日本経済評論社
200910

社会的企業(ソーシャルエンタープライズ)―雇用と福祉のEUサードセクター

カルロボルザガ、ジャック ドゥフルニ(Jacques Defourny、 Carlo Borzaga)
石塚秀雄・内山哲朗・柳沢敏勝訳
日本経済評論社
2004年7月



 
ケベックの社会的経済、序説   (PDF版)

  Outline of Social Economy in Quebec

 石塚 秀雄、都留文科大学研究紀要 61、 99―109、 2005

  1 はじめに ケベックおよび社会的経済の発展の歴史
  2 ケベック社会的経済の展開の歴史的理由。1960年代以降の展開
  3 ケベック社会的経済の構成要素
  (1)失業者雇用挿入
  (2)在宅介護
  (3)保育所運動
  4 社会的経済セクターのネットワークの三本柱


 
フランスの社会的経済の現状と事例(アトランチック地域圏)(PDF版)
 石塚秀雄稿、ロバアト・オウエン協会報告、2004.07.25
 
 ▽主な目次
  はじめに
 1. フランスの社会的経済の制度と諸団体
  1.1. 政府の対応
  1.2. 社会的経済・連帯経済の諸組織と制度
 2. 関連法律の整備
 3. 社会的経済・連帯経済のプロジェクト
  3.1. 政府の社会的経済・連帯経済プラン
  3.2. 社会的経済の2つの主要目的と担い手
 4. アトランティク地域の社会的経済の現状
  おわりに 


 社会的経済 クセジュ (PDF版)
   :翻訳 石塚秀雄
 
 『社会的経済』(1983年発行)、原著:アンドレ・ヌリス 試訳:主任研究員 石塚秀雄、(クセジュ 2131) L'ECONOMIE SOCIALE Andre Neurrisse、掲載日2004年02月21日、非営利・協同総合研究所いのちとくらしのサイト(以下)にUP。

http://www.inhcc.org/jp/research/info/20040221-ishizuka.html

 この資料は、フランスの社会的経済の歴史と構成について述べた本の試訳です。1984年発行の本なので、数字資料的には古くなっていますが、基本的な文献といえます。社会的経済とは非営利・協同経済とほぼ同義です。1970年代より、フランスで再生した理念であり運動です。概念的には19世紀に政治経済と対立した社会的経済に端を発します。社会的経済セクターは、従来の公共経済セクター、民間市場セクターの二分法的考えに対して新しい第三の枠組みを示すものとして、第三セクターとも呼ばれます。
 イギリスの「第三の道」、フランスの「連帯経済」、イタリアの「社会的協同組合」、最近のヨーロッパの「社会的企業」などの動きにつながるものです。社会的経済セクターの担い手としては非営利・協同組織としての協同組合、共済組合、NPO、財団といった形式があげられますが、いずれも経済活動・事業活動を行う組織として、また市場や準市場で活動する性格として位置づけられています。
 
 クセジュ 2131、社会的経済、アンドレ・ヌリス・L'ECONOMIE SOCIALE Andre Neurrisse、石塚秀雄 試訳 < >は原注 [ ]は訳注
  ▽主な目次
 序 論 社会的経済の解放
 第1部 社会的経済の理論的基礎
 第1章 利益の廃止から労働者の協同体主義へ
  1.シャルル・フーリエと協同体ファランステール
  2.ロバート・オウエンと公平な交換
  3.フリップ・ビュッシェと生産協同組合
 第2章 プルードンと相互扶助主義
  1.プルードンの理論
  2.プルードンの共済組合制度
  3.信用共済の構想
  4.プルードンの経済哲学
 第3章 神秘的で実証主義的なモラリズム
  1.フレデリック・ル・プレの社会改革
  2.積極的な連帯主義
 第2部 社会的経済の制度的枠組み
 第1章 アソシエーション的制度
  1.法人格の承認
  2.1901年法の自由主義
 第2章 協同組合制度
  1.生産協同組合
  2.消費協同組合
 第3章 共済組合制度
  1.共済組合
  2.農業社会保険
 第4章 相互扶助組織制度
  1.保険
  2.銀行
 第3部 社会的経済の規模
 第1章 フランスの社会的経済の規模
  1.経済全体における社会的経済
  2.社会的経済の社会的機能
 第2章 社会的経済の国際的影響力
  1.国際関係
  2.西ヨーロッパ各国
  3.アメリカ各国
  4.東ヨーロッパ
  5.アフリカ各国
  6.アジア大陸
  結論
  文献

 <海外論文&レポート>
 
フランスの地域雇用創出と社会的連帯経済  (PDF版)
 石塚秀雄、協同の發見、協同総合研究所、2003年12月 第137号

  1. はじめに
  2. フランスにおける連帯経済
  3. 雇用創出委員会CBEと起業活動組織
  4. 雇用挿入または創出の方法
  5. おわりに

社会的経済とはなにか―新自由主義を超えるもの

ジャックモロー(Jacques Moreau)
石塚秀雄・北島健一・中久保邦夫訳
日本経済評論社
1996年11

社会的経済―近未来の社会経済システム

J. ドゥフルニ、J.L. モンソン(Jacques Defourny、Jos´e L. Monz´on Campos)
富沢賢治・佐藤誠・中川雄一郎・内山哲朗・石塚秀雄訳
日本経済評論社
19952月



 ヨーロッパの社会的経済  (PDF版)   2013年06月22日up

 (海外の窓 海外のワーカーズコープの動向、第1回)、1993.7.15、石塚秀雄、隔月刊誌『仕事の発見』日本労協連刊、1993年12月号
 1.新しい経済の在り方
 2.社会的経済とは?
 3.先進国の新しい経済セクター
 4.社会的ヨーロッパへの道
 5.ワーカーズコープの役割



 〔補論〕
 
社会的経済セクター(別称:非営利・協同セクター)提唱の意味 (PDF版) 

 【原題】アソシエーション社会の危機、石塚 秀雄、葦牙 (35)、 190194 200907

 〔補論〕
 経済的事業体としては「社会的企業」「社会的事業組織」、システムとしては「社会的経済」としての「結社の自由」   (PDF版)

 【原題】 結社の自由と社会的市民性、石塚 秀雄、葦牙 (34)、 191196 200807
  1 憲法21条の「表現の自由」考
  2 「結社の自由」考
  3 社会的市民性の構築

 


information


  

・石塚秀雄
非営利・協同総合研究所いのちとくらし主任研究員






















▽「現代と協同」研究会からのご案内

富沢賢治のページ

中川雄一郎のページ

堀越芳昭のHP

角瀬保雄のページ
(労働者協同組合の組織・運動・経営)
「非営利・協同総合研究所いのちとくらし」所報

柳沢敏勝のページ
(明治大学商学部論文・記事一覧)

内山哲朗のページ
(専修大学研究者情報ベース)

杉本貴志のページ
(関西大学商学部研究業績)

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田中夏子のページ
(都留文科大)

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非営利・協同総合研究所いのちとくらし

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編集人:飯島信吾
ブログ:ある編集者のブログ
企画・制作 インターネット事業団(本メールにご連絡ください)

UP 2013年06月05日
更新 2013年06月15日
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